家族

『名もなき毒』

無差別殺人事件と、歪んだ自意識を持つ人間が周りを巻きこんで起こす事件が平行して描かれる。両者に共通してあるのは、激しい怒り。怒りは限界点に達し、外に向けて毒が発せられる。その毒は、結果として、自分自身を苛む毒と、他者を苛む毒に変わる。主人公は、「我々の内にある毒の名前を知りたい」と煩悶する。
映画

映画「クラッシュ」

人種も階層も異なる人々が善き面も悪しき面も持ちながら、不寛容と怒りに翻弄されている。侮辱され、自尊心を傷つけられた人々は、ある場合は極端な破壊的な行動にさえ赴く。玉突きの玉のようにそれぞれがクラッシュする。 「透明のマント」を着た5歳のララに衝撃の出来事が起こり、観るものは天国と地獄を味わう。

『人間の運命』

ロシアのドン地方の大地に根ざして、大地に結びつけられて、浮ついたところのない、愚かしさも、無慈悲さも、善良さも、邪悪さも、心根のまっすぐさも、たくましさも、そして弱さも、すべてを含んだような人間たちが、運命に、歴史に翻弄されながら生きている、その姿に心が震える。
映画

映画「その土曜日、7時58分」

シドニー・ルメット監督 アメリカ 2007年  父と子の葛藤。兄弟の葛藤。単純で無邪気な弟。心の歪みで性格を破綻させた兄。(最初から最後まで説明あり。要注意)  土曜日の朝、7時58分に事件は起きる。そこを起点に、時間が前後にさかのぼられる...

『冷血』 IN COLD BLOOD ⑥

カポーティの数寄な生涯を友人、愛人、ライバルが生々しく証言した、聞き書きによる伝記『トルーマン・カポーティ(上、下)』(ジョージ・プリンプトン著)がある。  その中にカポーティ自身の言葉もあり、次のように述べている。  葉や花のある植物を読...

『冷血』 IN COLD BLOOD ⑤

Ⅳ 隅っこ(コーナー)  フィニー郡裁判所の4階の郡拘置所は、保安官住宅と、鋼鉄の扉と短い廊下でへだてられただけだった。保安官住宅には、保安官代理とその妻マイヤー夫妻が住んでいた。  マイヤー夫人は落ちついた、やさしい性質の持ち主で、率直な...

『冷血』 IN COLD BLOOD ④

Ⅲ 解答  クラター家のことを刑務所でディックに話したフロイド・ウェルズの告白によって、KBIは犯人ディックとペリーにたどり着く。  二人の写真をみたデューイーの妻マリーは、ペリーに対して、傲慢な面構え、しかし凶悪とはいいきれない、繊細だが...

『冷血』 IN COLD BLOOD ③

Ⅱ 通り魔   クラター氏の長年の友人たちによる、惨殺された母屋の片付けの描写から始まる。農場の北側の畑で、血がついた敷布類、マットレス、ナンシーの枕、その他諸々が燃やされる。  KBIのベテラン刑事、FBIの特別捜査官の経験もあった、アル...

『冷血』 IN COLD BLOOD ② 

Ⅰ 生きた彼らを最後に見たもの  リヴァー・ヴァレー農場の主人、ハーバート・ウィリアム・クラター、48歳。  妻、ボニー・フォックス、クラター氏の大学時代のクラスメートの妹で、信心深い、華奢な娘だった。3歳年下。    そして、4人の子ども...

『冷血』 IN COLD BLOOD ① 

トルーマン・カポーティ著 龍口直太郎訳 新潮文庫 1978年  1959年11月15日~16日、アメリカ中西部カンザス州フィニー郡ホルカム村で起ったクラター一家4人惨殺事件。善良で勤勉なクラター氏、病気がちの妻、15歳のケニヨン、村の人気者...