『人間の運命』

ロシアのドン地方の大地に根ざして、大地に結びつけられて、浮ついたところのない、愚かしさも、無慈悲さも、善良さも、邪悪さも、心根のまっすぐさも、たくましさも、そして弱さも、すべてを含んだような人間たちが、運命に、歴史に翻弄されながら生きている、その姿に心が震える。

『鼓笛のかなた』

呪者によって呪いを運ぶ使い魔とされた霊狐の野火と、人間の少女・小夜の心と心が求め合う、ひたむきで、一途な物語。一方で憎しみの連鎖により、いがみ合い、傷つけ合う人々の物語。

『冷血』 IN COLD BLOOD ⑥

カポーティの数寄な生涯を友人、愛人、ライバルが生々しく証言した、聞き書きによる伝記『トルーマン・カポーティ(上、下)』(ジョージ・プリンプトン著)がある。 その中にカポーティ自身の言葉もあり、次のように述べている。 葉や花のある植物を読者に...

『冷血』 IN COLD BLOOD ⑤

Ⅳ 隅っこ(コーナー) フィニー郡裁判所の4階の郡拘置所は、保安官住宅と、鋼鉄の扉と短い廊下でへだてられただけだった。保安官住宅には、保安官代理とその妻マイヤー夫妻が住んでいた。 マイヤー夫人は落ちついた、やさしい性質の持ち主で、率直な、実...

『冷血』 IN COLD BLOOD ④

Ⅲ 解答 クラター家のことを刑務所でディックに話したフロイド・ウェルズの告白によって、KBIは犯人ディックとペリーにたどり着く。 二人の写真をみたデューイーの妻マリーは、ペリーに対して、傲慢な面構え、しかし凶悪とはいいきれない、繊細だがひね...

『冷血』 IN COLD BLOOD ③

Ⅱ 通り魔  クラター氏の長年の友人たちによる、惨殺された母屋の片付けの描写から始まる。農場の北側の畑で、血がついた敷布類、マットレス、ナンシーの枕、その他諸々が燃やされる。 KBIのベテラン刑事、FBIの特別捜査官の経験もあった、アルヴィ...

『冷血』 IN COLD BLOOD ② 

Ⅰ 生きた彼らを最後に見たもの リヴァー・ヴァレー農場の主人、ハーバート・ウィリアム・クラター、48歳。 妻、ボニー・フォックス、クラター氏の大学時代のクラスメートの妹で、信心深い、華奢な娘だった。3歳年下。  そして、4人の子ども。 長女...

『冷血』 IN COLD BLOOD ① 

トルーマン・カポーティ著 龍口直太郎訳 新潮文庫 1978年 1959年11月15日~16日、アメリカ中西部カンザス州フィニー郡ホルカム村で起ったクラター一家4人惨殺事件。善良で勤勉なクラター氏、病気がちの妻、15歳のケニヨン、村の人気者1...

『くちぬい』

ホラーサスペンス。集落の老人たちの穏やかさの衣に隠れた悪意。よそ者をいたぶり、殺すことも厭わない老人たち。よそ者の夫婦の妻は精神を痛められ、追い詰められ、衝撃的な行動をとる。

『ネットと愛国』

安田浩一著 講談社 2012年「在特会」とは 「在日特権を許さない市民の会」(在特会)、日の丸を林立させ、朝鮮の人たちに対して、「出て行け」「殺せ」と大音量で叫びながらデモ行進する姿。吐き気を催すほど嫌悪感を覚える。 京都朝鮮学校、徳島高教...