映画「あるスキャンダルの覚え書き」

映画

                     

 リチャード・エアー監督 イギリス 2006年

 実話を元にしたゾーイ・ヘラーの小説(2003年 イギリス)を原作とした映画。(内容の説明あり。要注意)

 

 中学生の教え子と関係をもつ新任の美術の女性教師、シーバ(ケイト・ブランシェット)。夫は20歳年上で、思春期の女の子とダウン症の男の子の母親。裕福で一見幸せそうだが、シーバは子どもの世話、家庭の維持に疲れきっていて、自分を取り戻したくて教師になった。
 シーバの育った家庭も問題を抱えていた。シーバは自分に自信がもてない。自己肯定感が低い。そして、自分の欲望、衝動を適切にコントロールできない。

 シーバが赴任した中学校には、定年間近の初老のバーバラ(ジュディ・デンチ)がいた。同居人は老いたネコのみで、孤独に蝕まれていた。
   バーバラはシーバの満たされない思いを嗅ぎとったのだろうか、シーバに好意を寄せ、近づく。シーバをふわふわした妖精のようだと思い、シーバの一挙手一投足を日記に綴り、外からみるとそれは妄想と区別がつきがたい。
 本人は自己愛のなかに浸りきっていて、これまでも人を変え、同じ状況を生きていた。シーバの前は、やはり同僚のジェニファーにストーカー紛いに付きまとい、ジェニファーは学校を移り、結婚する。バーバラは新郎に葬式用のお花を贈っている。

 バーバラの最愛のネコは老いて死んでしまう。打ちひしがれたバーバラはシーバを頼りにするが、シーバは家族を選ぶ。バーバラはシーバに悪意を向ける。シーバに心を寄せる同僚に、生徒とシーバの関係をほのめかし、最終的にシーバは児童レイプの罪で逮捕され、刑に服する。

 バーバラは懲りずに、また新たな相手と同じようなことを繰り返そうとしているところで終わる。

 

 バーバラの孤独と妄想と希望が身につまされる。
 孤独は人を蝕むが、家族もまた人の心を蝕む。シーバのように。人間関係が複雑に絡み合う故に救いがたい思いがする。
 現実には、女性教師は服役後、生徒と結婚したという。女性教師が築いていた離婚した家庭のその後を思って暗澹とした気持ちになるが、それでも人はそれぞれに自分の選んだ生を生きていくしかない。選ばされた生を生きることを余儀なくされた人は、苦しくてもいつか自分の生を生きていくしかない。

 ジュディ・デンチ、撮影当時70歳くらい。顔のしわの一つ一つ、悪意も執着も弱さも、すべて魅力的だった。

 

              

 

 

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