支配

『ランスへの帰郷』

恥が誇りに変貌する瞬間、それは一貫して政治的なものである。支配と服従のメカニズムはどのように作動したかについて考察するために過去を振り返る。どういう本に影響を受け、どういう本を血肉として自分を育ててきたかの省察でもある。

『家畜人ヤプー』

こういう世界に、ファナティックに耽溺する人がいるのだと目を開かされた1冊。人間の理性を奪う方法、苦痛を歓喜、僥倖に変える方法の言及にも関心がいった。根本原理は、宗教そのものの原理であり、オーソドックスな方法だと思う。

『大丈夫な人』

社会的に弱い立場にいる人の持つ、もどかしさ、あきらめ、鬱屈感が、悪い状況を打開するのではなく、身を任せ、流されてしまう方向に動いていく。受け身の人間の心の働かせ方が、これでもかと描かれている。
映画

映画「PLAN 75」

年をとっても、穏やかに暮らしていける生活の条件、経済的な条件が整っているならば、人は自ら死を選びたいとは、そうは思わないだろう。「プラン75」のあくどさがきわだつ。
映画

映画「プリズナーズ」

父と娘の物語の定番のようなお話、プラス幼児誘拐の話をからませてある。「愛する娘を奪われ、狂気にとらわれた父親が取った行動とは!?」と、センセーショナルにとりあげられていて、つい観てしまった。

『誰もボクを見ていない なぜ17歳の少年は、祖父母を殺害したのか』

17歳の少年の祖父母に対する強盗殺人事件。過酷な境遇で育った少年は、母親に支配、コントロールされていた。少年は、社会の、そして何より母親の被害者だった。その母親もまた、被害者だったかもしれない。
映画

映画「異端の鳥」

説明は一切ない。モノクロの映像。普通と言われる人々の苛烈な暴力。どこにでもある。出会う人、出会う人が少年に悪意と邪悪と残虐のかぎりを尽くす。善き人に出会えることはあるのかと、画面を見つめる。

『砕かれた神―ある復員兵の手記』

「敗戦後、天皇は責任をとって自決されると信じていた。少なくとも退位されると」 『砕かれた神』の著者、渡辺清は16歳で海軍に志願し、20歳で敗戦をむかえる。激烈と言えるほどの純粋な天皇崇拝者であった。それが筋金入りの天皇否定論者に変わる。その経緯を辿る。
映画

ノーム・チョムスキー インタビュー

ノーム・チョムスキーのインタビュー。93歳。明晰で冷徹な分析と冷静な語り。オリバー・ストーン監督はウクライナとロシアとアメリカの関係を映像で表現したが、チョムスキーは言葉と論理で、白日の下に晒している。アメリカの驚愕の実態が語られる。

『放蕩記』

「『放蕩記』を、受け容れがたい、これは母親への復讐の書でしかないと断じる人たち」の、「最も理解の妨げになるのは、〈母性という神話〉よりも、〈善なる者の傲慢さ〉、つまり多数の側にいることで自らの正義を疑わない人たちの、想像力の欠如ではなかろうか」