信頼

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映画「茜色に焼かれる」

社会の底辺でおしひしがれている人たちの息苦しさ、どうしようもなさ、無力感、屈折する怒り。一人は自殺し、一人はそれでも私はこうやって生きていくしかない、こうやって生きていくのだと、世間に宣言しているような映画だった。

『愛されなくても別に』

深夜のコンビニで、週6日バイトしている大学生の宮田。殺人犯の父を持つ江永。宮田は江永のところに転がりこんで、女二人の共同生活を始める。宮田も江永も欠落をかかえている。その穴を二人でいることで埋め合える。 「親は選べない。でも捨てることはできる。その勇気がここにある」こういう紹介の文章をみて、読まない選択は私にはない。
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映画「ミリオンダラー・ベイビー」

リングに登場したときの、「青い熊」ビリーの存在感に打ちのめされた。虚無の塊のような、地獄からやってきたような、人を寄せ付けない暗さのすさまじさに引き込まれそうだった。私の記憶のなかでは、かっこいい女になっていた。
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映画「ドラゴン・タトゥーの女」

40年前の少女失踪事件の謎を現場の孤島で追跡調査するという筋立てに、天才的なハッカー技術をもち、孤独で、暗い翳を抱えて、強くて、非情で、甘さだの優しさだのとは無縁なリスベットが絡み、過去の忌まわしい闇が解明される。
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映画「クラッシュ」

人種も階層も異なる人々が善き面も悪しき面も持ちながら、不寛容と怒りに翻弄されている。侮辱され、自尊心を傷つけられた人々は、ある場合は極端な破壊的な行動にさえ赴く。玉突きの玉のようにそれぞれがクラッシュする。 「透明のマント」を着た5歳のララに衝撃の出来事が起こり、観るものは天国と地獄を味わう。

『人間の運命』

ロシアのドン地方の大地に根ざして、大地に結びつけられて、浮ついたところのない、愚かしさも、無慈悲さも、善良さも、邪悪さも、心根のまっすぐさも、たくましさも、そして弱さも、すべてを含んだような人間たちが、運命に、歴史に翻弄されながら生きている、その姿に心が震える。
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映画「善き人のためのソナタ」

 盗聴という行為のなかでも、善良な、平凡な人間として、善きことを選びとる。当たり前の、普通の人間の行為。だが、それを選びとることが、どれほど難しいことか。自己顕示欲のない、一粒の麦のような人物を描いて秀逸。自分の存在に感謝してくれる人間がいるという事実を抱きしめられる幸せ。

『鼓笛のかなた』

呪者によって呪いを運ぶ使い魔とされた霊狐の野火と、人間の少女・小夜の心と心が求め合う、ひたむきで、一途な物語。一方で憎しみの連鎖により、いがみ合い、傷つけ合う人々の物語。
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映画「ダウト」

ジョン・パトリック・シャンリー監督 アメリカ 2008年  1960年代半ば、ニューヨークのカトリック学校。子どもたちは普通に教科を学ぶ。教えるのは神父とシスター(修道女)。戒律は厳しい。   神父とシスターの間には目に見える格差がある。神...

『憎むのでもなく、許すのでもなく』

過去を見るまなざしに新しい視線を導入する。自分を被害者として過去に押さえ込まれてしまう立場から、自分を主体として立ち上げること。