受容

『ランスへの帰郷』

恥が誇りに変貌する瞬間、それは一貫して政治的なものである。支配と服従のメカニズムはどのように作動したかについて考察するために過去を振り返る。どういう本に影響を受け、どういう本を血肉として自分を育ててきたかの省察でもある。

『こんな風に過ぎて行くのなら』

 浅川マキという歌手がいた。  野坂昭如が、「あなたは、最後は、養老院で誰にも相手にされずに、あたしゃね、これでも昔は、ちっとは名の知れた歌手でね、と言っているだろうよ」と、言ったとか。そういう最後も悪くはないと思う。

『家畜人ヤプー』

こういう世界に、ファナティックに耽溺する人がいるのだと目を開かされた1冊。人間の理性を奪う方法、苦痛を歓喜、僥倖に変える方法の言及にも関心がいった。根本原理は、宗教そのものの原理であり、オーソドックスな方法だと思う。

『緋色の記憶』

裏さびれたバス停に緋色のブラウス姿で降り立ったエリザベス・チャニング。同僚の教師で、妻子あるレランド・リードを愛する。そこから「チャタム校事件」と呼ばれる未曽有の悲劇が始まる。
映画

映画「嘆きのピエタ」

「前代未聞の愛の結末に、世界が言葉を失った魂のサスペンス・ドラマ」、公式ホームページのキャッチコピー。本当に言葉を失うかも……
映画

映画「マイ・マザー」

 原題は「僕は母を殺した」。ちょっと身構えてしまうが、内容はずっと穏やか。16歳の主人公ユベールの母親に対する愛憎と揺れ動く心の狭間を二人の派手な罵り合いや、斬新な映像で見せる。 グザヴィエ・ドラン、19歳で、監督・脚本・製作・主演。天才だと思う。鮮烈のデビュー作。

『グロテスク』

 1997年3月に東京渋谷の円山町で起きた「東電OL殺人事件」と呼ばれる事件をモチーフにした小説。被害者は一流企業に勤務する39歳のエリート女性で、夜は売春をしていたらしいことで、人権侵害にも近いメディアの報道が続いた。斎藤美奈子は解説で、「『グロテスク』によって、はじめて私は、事件の被害者が「救われた」と感じた」と書いている。

『八日目の蟬』

 妻子ある人の子を身ごもり中絶した希和子は、男の赤ん坊を連れ出し、4年間の逃亡生活を始める。女たちの共同生活の場でもあったエンジェルホームで2年半過ごし、それから小豆島にわたる。海と、空と、雲と、光と、木と、花とに囲まれたそこでの生活は夢のようだったが、突然終わりを告げる。成長した子は同じように妻子ある人の子を身ごもる。
映画

映画「そして父になる」

是枝裕和監督 2013年 「血の繋がりとは何か」「親子とは」「家族とは」を考えさせられる映画だった。 人は人的な環境に育てられる、強い影響を受ける、それは血の繋がりよりも濃いと感じさせられる映画だった。 『ねじれた絆』が参考資料に挙げられて...

『ある男』

平野啓一郎著 文藝春秋 2018年 武本里枝は2歳の次男を亡くし、その治療の過程で夫との間に決定的な亀裂を生じ、離婚する。その後父の死を契機に、長男を連れて、宮崎の実家に帰る。実家の文房具店を切り盛りしながら、心の整理がつかない状態で暮らし...