映画

映画「告発のとき」

行為とたたずまいの落差。イラクでは一体何が起こっていたのかと、見る者に暗い戦慄を起こさせる。マイクの「父さん、助けて」という声がいつまでも心に張りつく。ハンクは、少なくとも自分が信じてきた世界とは違う世界が、イラクで戦う人間を蔽いつくしていることに呆然とする。

『時間』『審判』

堀田善衛の『時間』と、武田泰淳の『審判』を読んだ。「殺、掠、姦―1937年、南京を占領した日本軍は暴虐のかぎりを尽した」人々はどのように駆り立てられ、どこに、どのように集められ、そしてどのように犯され、どのように殺され、その屍骸は誰が、どのように処理したのか。 
つれづれに

つれづれに

2月27日、『1★9★3★7』の国際読書会が開かれた。 明治大学文学部の4人の女性研究者の主催で、ポーランド、ドイツ、フランス、韓国、中国の若手からベテランの日本文学、日本歴史、日本政治の研究者が参加。会場とズームでの開催で、400人前後が...
つれづれに

つれづれに

2月24日、ロシア軍、ウクライナ侵攻。 これまで軍事進出、戦争をするのはアメリカという認識だったが、ついにロシアもか、という思い。ウクライナの人々は、不安と許しがたい思いだろう。 メディアも、SNSも、こぞってプーチンの暴挙を非難しているよ...
映画

映画「オールド・ボーイ」

チャランポランで、真面目に生きているとは言えない男が、ある日突然、妻と娘を残して、理由もわからず監禁された。そして、15年後に解放される。そこから男の復讐劇が始まる。若い女と知りあい、愛しあい、謎に迫っていく。なぜ監禁されたのか。監禁した相手は、なぜ解放したのかと問うべきなのだと語る。
映画

映画「マイ・マザー」

 原題は「僕は母を殺した」。ちょっと身構えてしまうが、内容はずっと穏やか。16歳の主人公ユベールの母親に対する愛憎と揺れ動く心の狭間を二人の派手な罵り合いや、斬新な映像で見せる。 グザヴィエ・ドラン、19歳で、監督・脚本・製作・主演。天才だと思う。鮮烈のデビュー作。

『放蕩記』

「『放蕩記』を、受け容れがたい、これは母親への復讐の書でしかないと断じる人たち」の、「最も理解の妨げになるのは、〈母性という神話〉よりも、〈善なる者の傲慢さ〉、つまり多数の側にいることで自らの正義を疑わない人たちの、想像力の欠如ではなかろうか」
映画

映画「ブラック・スワン」

主人公ニナは一流バレエ団に所属するバレリーナ。ニナは母親との関係で抑圧を抱えている。母親はニナが成功するのを望んでいない。いつまでも自分の支配下の「いい子」のニナであることを望んでいる。 ニナはそこから脱出するために、完璧さの実感=死に自らを解き放つ。
つれづれに

つれづれに

久々に神保町の岩波ホールに行った。暇人なのに、わざわざ大雪になるかもしれない日に。チラホラ降りはじめていた。帰りは一面真っ白かもと多少期待していたので、期待通りでうれしかった。年寄りなので、歩くのに必要以上に気を遣ったが。 岩波ホールは昔か...

『1★9★3★7 イクミナ』

「記憶の墓をあばく」というすさまじく暗く重たい熱量。目を見開き、見たくないもの、隠れているもの、隠蔽されているものを見ようという意志のほとばしり。負の歴史に対峙するとはこういうことなのかと震撼させられる。「ゲッベルスと私」のポムゼルと対極にある生のかたち。