ダーレン・アロノフスキー監督 アメリカ 2010年
解説には、「主人公が精神を壊していくサイコスリラー」とある。
見終わった後は、予想と少し違ったような気もした。あれ、こんな感じか、と。時間が経つにつれ、じわじわと心に沁みてきた。
主人公ニナ(ナタリー・ポートマン)は一流バレエ団に所属するバレリーナ。清純な白鳥のなかにどす黒い黒鳥を宿させる新演出の「白鳥の湖」の主役に抜擢される。ニナは完璧な踊りで清純な白鳥は問題ないが、黒鳥の部分を踊れない。演出家(ヴァンサン・カッセル)は、自分の殻を破れと叱咤する。
バレエ団の前の主役ベスは演出家に引退を勧告され、車に飛び込んで大怪我を負う。
ニナは母親との関係で抑圧を抱えている。母親もバレエをやっていたが、ニナを妊娠してバレエをあきらめたと、ことあるごとに話す。ニナがバレエをやることを献身的に支えている。ニナは母親の支配から逃れられない。母親も病んでいる。母親はニナが成功するのを望んでいない。いつまでも自分の支配下の「いい子」のニナであることを望んでいる。
ニナはそこから脱出するために、自分を解放するために精神を壊していく。狂気のほうにとらわれていく。そして、完璧さの実感=死に自らを解き放つ。
現実には妄想と幻覚に苛まれながら、それでも舞台上では黒鳥を完璧に踊り、死に向かって飛び立つ。
ナタリー・ポートマンは10キロの減量で身体づくりをしたという。アカデミー主演女優賞を受賞。演出家のヴァンサン・カッセル、「イースタン・プロミス」のキリル役。良い役者にはいつも思う。これは同じ人なのかと。同じく「イースタン・プロミス」のヴィゴ・モーテンセンが、「グリーンブック」のトニー役と知って、仰天した。
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