2021-03

『八日目の蟬』

 妻子ある人の子を身ごもり中絶した希和子は、男の赤ん坊を連れ出し、4年間の逃亡生活を始める。女たちの共同生活の場でもあったエンジェルホームで2年半過ごし、それから小豆島にわたる。海と、空と、雲と、光と、木と、花とに囲まれたそこでの生活は夢のようだったが、突然終わりを告げる。成長した子は同じように妻子ある人の子を身ごもる。
映画

映画「8月の家族たち」

見終わった後、しばらく腰を上げられないような、ひたすら重たくのしかかるような映画だった。 一方で、確かに現代の家族のある面の典型とも言えるような、すさまじい映画だった。出てくる人、出てくる人、皆が病んでいるような、それでいて、どこにでもいるごく普通の人のような。救いはないけれど、自分の場所で、そうやって生きていくしかない。

『ファーストラヴ』

女子大生による父親殺しというセンセーショナルな事件。父親は高名な画家。なぜ殺されたのか? その家庭では何が起きていたのか? 親との関係で心を病む、生きづらさを抱える、何かしら歪んだ世界を生きざるをえない人生を押しつけられる、この理不尽さに苛立ちと怒りを募らせる。こういう世界をミステリー風にうまく描ききったなと思った。

『愛されなくても別に』

深夜のコンビニで、週6日バイトしている大学生の宮田。殺人犯の父を持つ江永。宮田は江永のところに転がりこんで、女二人の共同生活を始める。宮田も江永も欠落をかかえている。その穴を二人でいることで埋め合える。 「親は選べない。でも捨てることはできる。その勇気がここにある」こういう紹介の文章をみて、読まない選択は私にはない。