映画「ドラゴン・タトゥーの女」

映画

 

                                                                     

 

   ニールス・アルデン・オプレヴ監督 スウェーデン 2009年 

 

 原作は、スティーグ・ラーソンの『ミレニアム』3部作。ラーソンは、世界的大ヒットをみることなく、出版前の2004年に心筋梗塞で死去。享年50歳。原題は「女を憎む男たち」。

 

 大物実業家の武器密売を批判する記事で名誉毀損に問われたジャーナリストが、40年前の少女失踪事件の謎を現場の孤島で追跡調査するという筋立てに、天才的なハッカー技術をもち、黒の革ジャンに鋲打ちのベルト、鼻ピアスという人目を引くルックスをした、警備会社ミルトン・セキュリティの女性調査員リスベット・サランデルが絡み、過去の忌まわしい闇が解明される。

 原作の雰囲気を壊さないように、忠実に映画化されているという。何と言っても、リスベットが無条件に最高だった。全身にタトゥーを入れ、「映画史上かつてない最強ヒロインの登場」。北川れい子の「世界は“リスベット”を待っている」という解説記事(以下抜粋)に尽くされている。

  その女、凶暴につき──。
  立てばパンク・ギャル。座れば天才ハッカー。歩く姿は、誇り高い野良猫。
  売られた喧嘩は相手が複数でも受けて立つ。

  リスベット・サランデルの存在は、彼女の登場自体が“大事件”といっても過言で
  はないほど際立っている。

  常識的な大人ならば誰でも顔をしかめるようなナリ、フリをして、甘えず、媚び
  ず、自分の謎めいた過去やトラブルには一切口を閉ざし、社会的ルールなどほと
  んど気にしない。

  自分の身に起こったことはあくまでも自分で対処し、ある種、痛ましいほどガー
  ドを固めて生きている150㎝と小柄なリスベット。

  原作からまんま飛び出したようなリスベット女優、ノオミ・ラパスのクールで献
  身的なハードボイルド演技。

  リスベット自身のダークな謎とその容赦ない行動もシビレさせるものがあり、
  “サイコ・キング”のハンニバル・レクター博士をチラッと連想したり。

  ……

 

 ノオミ・ラパス。インタビューを見ると、心(しん)の強い、思慮深い、一見おとなしめな印象で、落差にちょっと驚いた。
 原作の大ファンで、リスベット役をやりたかったが、当時は女性的な身体つきをしていたのでダメだろうと思っていた。決まったときには、役のためなら何でもすると思った。髪を切り、黒く染め、減量し、筋肉をつけるため筋トレし、鋭い動きを出すため格闘技の訓練もした。バイクの免許も取った、と話している。
 眉、唇、耳、鼻にピアスをつけることで外見も変えている。タトゥー以外のすべてが彼女自身のものだそうだ。

 恋をするリスベットの演技について聞かれ、
  彼女は自分を守るために固い殻を作っている。
  人を好きになったのは初めてで、まるで子どもみたい。
  愛は彼女にとって、最も危ういもので、愛に関しては、彼女はどうしていいか分
  からない。
  誰かを受け入れることは、とても怖いこと。無防備になって傷つきやすくなる。
  彼女の心はとても壊れやすい。
 と、語っている。

 

 2010年の封切り後に観たが、リスベットが夜明け前の薄闇の中で、地べたにすわってタバコを吸っている後ろ姿が記憶に焼きついている。孤独で、暗い翳を抱えて、強くて、非情で、甘さだの優しさだのとは無縁で……。私にとっても、最強、最高のヒロインだった。

 

             

 

 

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