ニール・ジョーダン監督 アメリカ 2007年
エリカ・ベイン(ジョディ・フォスター)はニューヨークのラジオ・パーソナリティで、愛するデイビッド・キルマーニ(ナビーン・アンドリュース)との結婚を控え、幸せな日々を送っていた。
ある夜、2人は愛犬を連れて散歩にでかけ、3人の暴漢に襲われる。3人は暴力の限りを尽くし、面白半分にその場面をビデオに撮っていた。
エリカは3週間の間昏睡状態で、目が覚めたときデイビッドの死を知らされる。
エリカはすべてを失う。そして、背後の足音に怯え、暗闇に震える。ラジオの仕事は何とか続けるが、事件前のように希望を語ることはもうできない。警察で捜査の進展を聞こうとしても、まともに取り合ってくれない。
エリカは護身用として非合法に拳銃を手に入れる。
偶然入ったコンビニで、店主が妻を銃で撃ち殺すのを目撃する。店主はエリカに気づき、エリカに銃を向ける。エリカは震えながら3発発射して、1発が店主に命中する。
エリカは深夜の地下鉄で、子ども連れの老人と若い学生にからむ2人組のチンピラに出会う。3人はそそくさと電車を降りていくが、エリカは動かない。チンピラはエリカにナイフを突きつけて脅すと、エリカは震えることなく2人を射殺する。立ち去りながら、「殺す前に電車から降りることもできたのに、何故?」と自問する。
真面目で正義感が強い、ニューヨーク市警のショーン・マーサー刑事(テレンス・ハワード)は、エリカのラジオ番組の視聴者で、昏睡状態のエリカを目にしていた。
エリカはマーサーにインタビューする。彼は、オフレコで3年間追いかけている男について話す。表向きは駐車場の経営者で、裏の顔はドラッグ、銃、人間、金になれば、何でも密輸している、と。合法的には捕まえられない、非合法しか方法はないと思わず口にし、その部分は消去してもらう。
別な日、エリカは監禁され売春を強要されていた少女を助けるため、男を射殺する。また、マーサーが追っていた男も殺す。
「犯罪者を裁く正体不明の処刑人」とマスコミは煽り立てる。
地下鉄に乗っていた若い学生から電車にはもう1人女性が乗っていたと証言があり、マーサーはエリカとの関連を疑う。暴行されたときなくした指輪が見つかり、エリカは自ら犯人を捜し出し復讐しようとする。
「自警行為に走る女性を主人公にしたダーク・アクション映画」とある。
すべてを失い、「声だけが肉体から離脱したように街の中をさまよっている」エリカに、マーサーはどうやって立ち直るのかと尋ねる。エリカは、「生まれ変わるの、別人に」と答える。恐怖が自分を見知らぬ誰かに変え、銃を買ったとき、世界との関係が変わる。
「何とか生きていくため、どんな方法であれ、恐怖を克服し、人生を取り戻す勇気を見つけなければならない。そうすることで彼女は〝ブレイブ ワン″─勇気ある者─になるのだ」と製作のジョエル・シルバーは語っている。
裏の顔を持つ男を殺したとき、エリカも深手を負う。傷ついた身体を引きずって帰ってきたとき、隣人の女性が、病院には行けないというエリカの傷の手当てをしてくれる。2人の会話に心が疼く。
エリカ「人を殺したの」
隣人 「おそわれたの?」
エリカ「ノー。でも殺した」
隣人 「故郷のスーダンじゃ、子どもに銃をもたせて、親を殺させるの。見せしめ
だよ。一線を越えれば誰もが人殺しになれる。でも、人を殺せば、心に深い
穴が開く」
隣人は、建物のエントランスにこびりついた血を、黙って掃除した。
エンドロールの前に、エリカの声がながれる。
もう戻れない
昔の自分にも
あの場所にも
自分の中の見知らぬ他人
それが今の自分の姿
最後の衝撃的な結末は、意見が分かれるかもしれない。私はどうでもよかった。全編に漂うジョディ・フォスターの姿が、私の感性にぴったりとはまる映画だった。
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