クレイグ・ゾベル監督 アメリカ 2021年
最終回の映像が目に焼きついて忘れられない。
これぞシスターフッドという昔なじんだ言葉が思い浮かんだ。昔はこの言葉が好きではなかった。私にとっては上滑りな感じで、軽薄ささえ感じられて。(あの頃、この言葉を真摯に使っていた人たちにはごめんなさい。)
でも、この言葉がいちばん最初に浮かんだ。それから、宗教的なバックグラウンド。そして、それを超えて、普遍的な人と人との関係のもっとも善きもの、受容があると思った。
よくできたエンターテインメント作品だと思う。それでもダークなサスペンスが好きでない人には50分×7回を見つづけるのは苦痛だろう。
私はサイコ・スリラーとか、この分野がいちばん好きだからはまったが、「ちょっと詰め込みすぎでは?」とは思った。現代の社会問題がこれでもかと反映されている。破綻はなく、それなりによくできていると思う。とても人気のあるシリーズだったらしい。ということは、万人受けする通俗的な部分も多々あるということだが。私にはユーモアのセンスもツボにはまった。
ちなみに、私の嫌いなジャンルはヒューマン感動ドラマといった類で、注意深く見ないように気をつけているが、紛れ込んで見てしまったときは、時間の無駄だったと怒りたくなる。自分に与えられなかったものに、焦がれるのか、嫌悪するのか、資質の違いが現れるのだろうか。
「メア・オブ・イーストタウン」の最後の結末にちょっとげんなりしかかっていた後の、最終的な結末。これは予測不能だったので、呆然というか、驚愕というか。そして、その後を描く。心に沁み入るようだった。
最終回を感動のドラマだとみる人もいるかもしれない。私は深く傷つきあった人間の快復、受容の一歩だとみた。私にとって受容は共感であり、感動とは違う。
最終回で至福を味わうためには、それなりにディテールを見逃さないように、丁寧に見ていないと難しいだろう。
私は身長が同じくらいで、ひげ面の人は皆同じに見えて、見分けがつかないので、途中で混乱して、2回通しで見た。かなり丁寧に見たことになる。最終回は3回も見てしまった。
最終回は、私のなかではベストの一つに入る。人との関係の持ち方に肯定的になれるし、自分も努力したいという前向きな気持ちになれる。
成り行きにまかせるような生き方、姿勢が私の根本にあって、その帰結が今だなと思う。現実にあらがう、立ち向かう、よりよいものを求めて闘うという姿勢は精神の世界には存在したが、現実の世界では皆無だった。現実にはほとんど自分の世界にこもって、眠りつづけて過ごした。
ここまでくると、成り行きにまかせるような生き方も、現実に立ち向かっていくような生き方も、それを常に選んでいるというよりも、身体に染みついてしまった習性のようなもので、条件反射的にやっていることで、それを成り行きにまかせるのではなく立ち向かえとか、立ち向かうのを少し休めとか言っても詮無いことではある。もう可塑性もなくなってきた年よりはあるがままを受け入れて、条件反射的に生きていくのも悪くはないと思う。
成り行きにまかせるような生き方のなかで、人間関係に関してだけは全く成り行きにまかせることなどできなかった。人との関係で不快感を覚えたり、軋轢を感じたりすると、強引に断ち切ってきた。関係を改善するように努力するということが全くできなかった。その結果が今日で、さほど後悔もしていないのだが、「メア・オブ・イーストタウン」を見て、単純な私は少しだけ行動様式を変えるように努力しようかなと思いはじめていたりする。