サイトアイコン つれづれに

映画「マイ・マザー」

 

                    

 

 グザヴィエ・ドラン監督 カナダ 2009年

 

 原題は「僕は母を殺した」。ちょっと身構えてしまうが、内容はずっと穏やか。16歳の主人公ユベールの母親に対する愛憎と揺れ動く心の狭間を二人の派手な罵り合いや、斬新な映像で見せる。

 ユベールが7歳のとき離婚した父と母。10年ほどうつ病で入院していた母。
 学校の課題で、親の職業のレポートに、「父とは離れて暮らしている。母は死んだ」というユベール。それを知って、「生きている母親を殺すのか」と教室にどなりこんでくる母親。ユベールは、「母親になれない母親と、息子になれない息子」だと、教師に話す。
 ユベールが唯一心を許せるのは同性の恋人アントナン。

 息子が同性愛者であることが理解できず、許せない母は、ユベールを田舎の寄宿学校に転校させる。寄宿学校で、ユベールは好意を示された男友達に、ドラッグ・パ-ティに誘われる。興奮し、踊り絡み合う二人だが、ユベールはそこから離れて行って、家に帰ってしまう。取り残された相手は、憎しみのこもった眼差しでユベールの後姿を見つめている。のちにユベールは校内でリンチに遭う。

 真夜中、母親を起こし、ハイの状態で、ユベールは普段話さないことを母親と話す。
 母親と気持ちを通わせ合えたと思ったユベールだが、来年度も寄宿学校に残ることがわかり、絶望する。「「王国」にいる」という母親宛の手紙を残して、寄宿学校から失踪する。

 校長から連絡をもらった母親は、校長に母子家庭で母親のせいだと言われ、逆上し、校長に迫力の罵詈雑言を浴びせる。振り込んだ寄宿料を返せ、自分の口座にすぐに振り込めと言って、受話器を投げつける。(母親が教室にどなりこんでくる場面と、この場面がとても好きだ) 母親は内にこもらないで外に発散するぶん、救われている気がする。

 そして、母親は、離婚するまで家族が暮らしていた森の家(「王国」)に行く。岩場に一人座るユベールの隣に母も座り、肩を抱く。ユベールは楽しかった、幸せな子ども時代を思い出していた。

 

 母と息子の関係でも、「サイコ」のような、どぎつい支配・依存の関係はあるだろうが、今回は、母と息子の幸せな関係で、思春期の愛憎の揺れが最終的には穏やかなかたちで映画のなかでは終わる。監督の半自伝的物語だという。

 グザヴィエ・ドラン、19歳で、監督・脚本・製作・主演。天才だと思う。鮮烈のデビュー作。その後、「わたしはロランス」、「トム・アット・ザ・ファーム」、「マミー」、「たかが世界の終わり」などを監督。どの作品も繊細で、肌あいが合う監督だ。

 

               

 

 

 

 

 

モバイルバージョンを終了